丹後先生の生き様公開と仲間づくりのためのブログ

自分・家族・生徒の幸せな生涯のために教育で社会をより良くしたい教師の、生き様公開と仲間づくりのためのブログです。『学び合い』、部活動の地域移行、学校の働き方改革、仕事と育児の両立、お金の教育、人生100年時代のキャリアプランをテーマに毎日発信しています。『学び合い』は知らない人でも、自由進度学習、個別最適化、アクティブラーニングといったワードに関心がある人と仲間になりたいです。

読書記録:ソーシャルジャスティス

最近「ソーシャルジャスティス」という本を読みました。

これまで詳しく勉強してこなかった分野?の本で、面白く、じっくり楽しんで読みました。

 

 

https://amzn.asia/d/5WTy7bC

そのまま訳したら社会正義ですが、普段読む本とは系統が違うためか社会正義だけでは内容がピンとこず、どういうジャンルの本かというのも一言で言えないです。

でもとにかく教師をしている立場からも学びが多い!

 

目次は以下のようになっています。

 

プロローグ 妊婦のワクチン啓発で気づいたThemとUs
第Ⅰ部  炎上はなぜ起きるのか
 第1章 脳科学で考える炎上のメカニズム 
 第2章 炎上への処方箋
第Ⅱ部 差別と分断を乗り越えるために  
 第3章 子どもに学ぶ同意とアドボカシー 
 第4章 マイクロアグレッション ムズムズした気持ちに名前がつくことで
 第5章 アメリカ社会の差別から学ぶ アジア人男性とハリウッド
 第6章 ベトナム帰還兵との対話 ThemとUsは簡単には分けられない
 第7章 沈黙を破る 「沈黙は共犯」の後で 
第Ⅲ部 女性小児精神科医が考えた日本社会への処方箋
 第8章 子どものメンタルヘルスに向けられる偏見に打ち勝つ脳科学 
 第9章 女性を苦しめる労働環境は男性をも苦しめる
 第10章 「母」への眼差し、女性の身体の自己決定権
エピローグ ラジカル・アクセプタンス ソーシャルジャスティスを育てるために

 

なるべく短めに本の目的を示すとしたら、エピローグから引用させてもらうと、

”簡単に色分けなどできないけれども、社会のあちらこちらにある「分断」を諦めずに乗り越えるため、どうやってソーシャルジャスティスの芽を育てていったらいいのか”

脳科学や心理学の知見をまじえ紹介したものになっています。

 

 

Ⅰ部の1章は炎上が起こる仕組みと、論理のねじれを表す言葉の紹介。

 

人間に備わっている承認欲求と生存のために感じやすくなっているネガティブな感情の吐口としてオンラインでの炎上と呼ばれる現象が起こっている。

 

自分が相手から何か言われて違和感を感じた時に、論理のねじれが起こっていないかに気づくことで自分の心を守れることがある。いくつか論理のねじれを表す名称の紹介。

 

例を一つあげます。

「藁人形法」という

”相手の論点に直接反論するのではなく、相手の論点とは違うダミー(かかし)のような論点を別に作り出して、その「かかし」を攻撃する手法”

が私は自分も出会ったことがある!となりました。

 

ずれた論点に焦点が移り、本来の論点に関しては議論しなくてもいいような状況が生まれる、相手の人格を攻撃する「かかし」作りによって聴衆が相手に向ける信頼を失わせる、などの効果があるそうです。

 

他にもこういった論理のねじれを表す言葉が紹介されていました。

炎上から自分の心を守る際に有効です。

 

 

2章は炎上への対策

 

1章では炎上の仕組みと心を守るために知っておくといい現象の名称が紹介されましたが、2章では炎上への処方箋として

 

立ち止まって考え直す力=「再評価」

が出てきます。以後の章でも度々出てくる考え方なので、著者が大事にされていることなのだと思います。

 

”「再評価」とは、ネガティブな感情を感じたときに一旦立ち止まり、その感情を客観的に再度「本当に今このようなネガティブな感情を感じる必要があるのか」と評価して、状況、または感情をポジティブな方向に持っていく心理的プロセス”

のことを指す言葉で、

私は「反応しない練習」で紹介される仏教やマインドフルネスの考え方に近いと思いました。

 

 

 

 

Ⅱ部では差別と分断を乗り越えるための社会正義に関する色々な言葉がそれぞれの章で出てきます。

 

3章のキーワードは「同意教育」と「アドボカシー」

 

「同意教育」自分の意見が受け入れられることもあれば受け入れられないこともある。自分の気持ちも他者の気持ちも尊重する同意についての教育。

 

「アドボカシー」望む変化の実現に向けて社会や個人に対して働きかけること。

私が社会の変化の実現に向けて発信を継続しているのもまさにこれ。

 

 

4章のキーワードは「マイクロアグレッション」

 

「マイクロアグレッション」

”政治的文化的に疎外された集団に対して日常の中で行われる何気ない言動に現れる偏見や差別に基づく見下しや侮辱、否定的な態度のこと”

 

誰にでもわかる差別と違って、気づくことや理解することが難しい小さな不快感。しかしその不快感が人によっては頻度と程度が大きく傷つくことがある。

 

例として出てきたのが

・女性の生き方における選択と種類の範囲が少ないこと(しずかちゃんのような女性の理想像)

・有害な男らしさ(男は弱みを見せてはならないというようなもの。ポストイクメンの男性育児にも出てきた言葉)

 

気づきにくいからこそ対策としては「再評価」が有効。

 

 

5章のキーワードは「表象」

 

「表象」とは”「どのようなものを日常的に目にして、どのような印象を抱くか」”ということ。

 

メディアで女性や日本人男性や黒人がどのように映し出されるか(表象)が社会と直接深く繋がっている。

 

メディアで差別的に表現されることが余計に社会の差別を助長することがある。

 

一方で、表象は社会を映し出す鏡であるため、鏡に映る像が変われば社会に変化を生むエンジンになることもある。

 

メディアでうまく望む変化の像を映し出すことができれば、それがエンジンとなって望ましい変化を生んでいくこともできる。

 

良い方向に利用していきたいもの。

 

 

6章のキーワードは「分断」

 

ThemとUsは簡単には分けられない。時間を取って個人と向き合うと、分断とはそんなに単純なものじゃないと分かる。

 

ThemとUsで遠く隔たっているように見えても、時間をかけて対話をすることで互いの理解を深めることができる。必要なのは時間と対話。

 

人々の行動や感情の発露に注目して耳を傾け、一面的でなく多面的に向き合うことが大事。

 

自身の内面にある事実や感情と向き合うには痛みを伴うこともあるが、呪縛から自分を解き放ち前進するには「ラジカルアクセプタンス(積極的受容)」という考え方が有効。

 

 

7章のキーワードは「沈黙」

 

酷いことが起きているときに「沈黙」しているのは「共犯」という考え方。

 

教師をしているといじめの構造を学ぶことが多いですが、傍観者と呼ばれる人もいじめを助長しているという考えがありますが、それと同じ考え方です。

 

気付いたのなら沈黙していうのではなく「声を上げなければならない」「なにか言わなければならない」「行動を起こさなければならない」。

 

私も、学校教育のあり方、教師の働き方、男性の育児、日本のお金の教育などには声をちゃんとあげ続けたいと思えました。

 

とても印象的だった部分があります。黒人差別の問題に取り組む方の発言で

 

「お父さんは、黒人差別を撲滅するために何をしたの?」と将来聞かれたときのために、羞じることのない行動を取らなければと思った。

 

というものがありました。私も子どもが生まれてから、また特に娘が生まれたからもこれは考えます。

 

男性の育休の普及やブラック勤務の減少、部活の地域移行、お金の知識の普及のために私が何をしてきたのか。

 

将来我が子に聞かれた時に、胸を張って答えられる父でありたい。

 

7章は自分がチェックした箇所やメモも多く、一番お気に入りです。

 

 

 

Ⅲ部は日本社会への処方箋として、著者のソーシャルジャスティスに基づく考えが紹介されています。

 

8章は子どものメンタルヘルスについて

9章は女性と男性の労働環境について(私はここが関心の高い内容です。)

10章は母としての女性への眼差しについて(中絶、妊娠、出産、母乳育児神話など)

 

 

Ⅲ部の中では私は9章の

女性と男性の労働環境について

が関心の高い内容です。

 

学びになったのは以下の部分。

 

・一人も医師を欠くことができないという状況は、女性医師の出産によってのみ問題になるわけではない。

 

・そんな体制では医師は病気もできず、家族の病気には対応できず、そして休暇も取れない。事故や病気は予期できるものではなく誰にでも起こりうる。

 

・一人も欠くことができない労働環境というのは、女性だけでなく男性をも苦しめる。

 

・出産ばかりを焦点にするのでなく、社会全体で家庭との両立を含めて働き方や考え方を変えていかなければならない。

 

・一生に数回の出産よりもさらに女性を働きにくくするのは終わりのない育児。

育児は終わりのない無償労働。(教師のブラック労働に似ている。)

 

・出産は女性にしかできないが、育児は男女ともにできる

 

・女性が育児があるから時短で帰る。→男性に育児はないのか?→育児をしなくていいとみなされる男性はそんなに長時間労働を強いられるのか?

 

・「男並みの働き」とは?

「家事育児をすべてやってくれる妻がいる男性と同じだけの時間仕事にコミットできる」ということになっていないか。

学校の業務量にもこの「男並み」の考え方が蔓延っているのを感じる。

 

・女性は育児という無償労働を押し付けられるし、男性や独身女性はその分の長時間労働を押し付けられる。

 

・問題の根本は長時間労働、終身雇用制、生産性ではなく労働時間での評価などの日本の労働環境。

にも関わらず矛先が育児中の女性に向きがち。

時短で帰る母親は休んでいるわけではなく家事育児という終わりのない無償労働に取り組んでいる。

 

・家庭の責任を女性に押し付ける社会を変える。

 

 

・既婚でも、独身でも、育児中でも、平等に仕事の責任があるし、平等に休む日を選ぶ権利がある。

 

 

・多面的な人生の要素を抱えながら仕事の顔を持っているはずなのに、一面的な仕事の顔しか職場では出してはならないという暗黙のプレッシャーがあった時代もあった。

 

・育児の現実を見せるたびに後輩からは、「そういう姿を見せてくれてありがとう」という言葉をかけられることが多い。

 

・人間としての多面性を見せながら互いに祝福できるような環境づくりに貢献していく。

 

 

・「『ゆっくりでもいいから、馬から降りないこと』が一番大事だよ。今が大変でも、とにかく止まらないこと。止まってしまうと再発進は大変だけど、今はどんなに遅いペースでもいいから、続けていれば、必ずその努力の蓄積は実る」

 

人生100年時代において大事なのは健康的に働き続けること。

 

・どんな立場のどんな人であっても、生き甲斐を感じている仕事なのであれば、止まらずに働き続けられるような社会であってほしい。スピードを上げて走る必要がある時期もあるが、ペースのアップダウンがあっても「止まらないこと」が大事。

 

 

9章も響く内容が多かったです。

私が普段アンテナを立てているソーシャルジャスティス(社会正義)と重なるからでしょう。

 

 

 

おもしろそうだと感じる部分があった人にはぜひおすすめします!