今回はベストセラー「嫌われる勇気」や「幸せになる勇気」の著者である岸見一郎さんが書いた子育て本「叱らない子育て」を読みました。
・「嫌われる勇気」や「幸せになる勇気」を読んだことのある人
・アドラー心理学に興味のある人
・子育てで子どもへの対応に困っている人
・教育者で教育における叱るやほめるについての理解を深めたい人
におすすめの本です。
〈本書を読んだ目的〉
叱ることが教育において効果的な手段ではなく、うまく付き合わなければいけないというのは「叱る依存が止まらない」の本でかなり分かりました。
「嫌われる勇気」や「幸せになる勇気」では「叱ってはいけない。ほめてはいけない。」という内容が出てくるので、ほめるが良くないことについても復習したいし説明できるようになりたいと思いました。
また、「叱ってはいけない。ほめてはいけない。」としたらどうしたらいいのかその具体策のヒントが欲しいと思いました。
〈全体の要約〉
1章「子どもの行動を理解しよう」
「嫌われる勇気」や「幸せになる勇気」でも出てくる目的論の話が子育てと関連づけて紹介されています。子どもの行動の原因を探るのではなく、「目的」と「相手役」を知ることが重要とありました。
2章「子どもを叱らない」
なぜ叱ってはいけないのかと、叱ると子どもはどうなるのかが紹介されています。叱ってはいけない理由としてここでも即効性はあるが問題行動を改善する効果がないと言われています。叱られて育つ子供は自分で判断できなくなり、萎縮してしまい、いざという時の親の援助を受け入れられなくなってしまいます。
叱る代わりに、どうすればいいのかを教える、原状回復を自分でさせる、威圧的ではなく毅然とした態度で接するなどの代替案が書かれていてよかったです。
3章「子どもをほめない」
なぜほめてはいけないのか、ほめることはどういうことなのかが紹介されています。今回の目的に当たるところなので後述します。
4章「子どもを勇気づけよう」
叱るでもほめるでもなく、ではどうすればいいのか。その提案が紹介されています。 「嫌われる勇気」や「幸せになる勇気」でも出てくる勇気づけの話です。ここも今回の目的に当たるところなので後述します。
5章「子どもの自立を助けよう」
アドラー心理学では教育の目標を「自立」としています。勇気づけによってどのように自立を援助していくのかが紹介されています。「嫌われる勇気」や「幸せになる勇気」でも出てくる「課題の分離」を入り口にして、どのように援助できるのかが書かれています。
6章「子どもとよい関係を築こう」
子どもの自立のために、親が子と良い関係を築いていくための考え方が紹介されています。土台になるのが「尊敬」と「信頼」であり、「幸せになる勇気」の方に詳しく出てきた内容を子育て向けに書いた感じです。
〈なぜ、ほめてはいけないのか〉
なぜアドラー心理学で「ほめてはいけない」と考えるのか。それは、
・ほめる人がいなければ適切な行動をしなくなってしまうから。
・ほめられないと課題に挑戦しなくなってしまうから。
・結果さえ出せればいいと思って不正を働くことに繋がるから。
などの考えからです。
また「ほめる」ことは
・自分にとっての理想の姿と比べて相手を評価すること
・ほめることは上下関係が前提にあり、上のものから下のものに行なわれる
であり、これでは4章以降に出てくる対等な関係を築き勇気づけをしていくことができなくなってしまいます。
一見ほめられることで望ましい行動が増えたように見えても、それはほめられることによって承認欲求を満たすために行なっていることになります。「その行動自体の意義を理解して行動することを主体的に選ぶ」というほめる側が期待している学習が起こっているわけではありません。承認欲求に縛られると他人の意思に振り回され自分の人生を生きられなくなるというのも問題です。
つまり、教育的な学習効果は期待できず、承認欲求を刺激して自分の人生を主体的に生きることを妨げてしまうため、ほめるという手段は良い方法ではないと考えることができます。
〈叱るもほめるも効果的でないなら、どうすれば良いのか〉
叱るもほめるも教育的に効果が期待できないのであれば、私たち親は、教師は、どうすればいいのでしょうか。その答えとして、アドラー心理学では「勇気づけ」を提案してます。
「勇気づけ」とは、「子どもが自分の人生の課題に取り組めるように援助すること」です。勇気づけのための必殺ワードはるため、「ありがとう」と「助かったよ」です。
「勇気づけ」のためには子どもが「自分には価値がある」と思えるようにする必要があります。「自分には価値がある」と思えれば、勇気を持って他者との対人関係に踏み出すことができ、そこから喜びや幸せが得られるからです。
勇気づけの方法として
・短所を長所に置き換えること
・「自分には価値がある」と思えるように貢献感(誰かの役にっている感覚)を持てるよう援助する→故に「ありがとう」「助かったよ」という言葉かけになる
・行動だけではなく存在に貢献感を持てるように援助する
などがあります。
よく理解するほど分かりますが、この「勇気づけ」には効果は期待できますが即効性はなく、根気がいります。根気がいることを続けるには理論を学んでメリットを感じなければ続きません。
詳しい勇気づけの考え方を知りたい人は5章6章がおすすめです。
ぜひ本書や「嫌われる勇気」「幸せになる勇気」を読んで、詳しく理解することをおすすめします。
〈補足:『学び合い』との関連〉
以前「嫌われる勇気」「幸せになる勇気」を読んだ時から私が教育実践の一番土台に置いている『学び合い』と「アドラー心理学」は似ている考え方が多いと思ってきました。
今回も読んでいて改めて『学び合い』と「アドラー心理学」の相似点に気づき、「やっぱりな!」と思った部分があるので紹介します。
6章の最後の「これからの子育て」のところで
勇気づけは「子どもが自分の人生の課題を解決する能力がある」という自信を持てるように援助することと出てきました。これは『学び合い』の子ども観である「子どもたちは有能である」に近いと思いました。
また、勇気づけは「他の人は仲間である」と思えるように援助することと出てきました。これは『学び合い』の学校観である「学校は、多様な人と折り合いをつけて自らの課題を達成する経験を通して、その有効性を実感し、 より多くの人が自分の同僚であることを学ぶ場」に近いです。
同じく6章の「子どもとの協力作業」のところで「どうしたらいいかわからないときは子供に聞く」と出てきました。これも『学び合い』における困ったときは子ども達に相談するという考え方と同じです。
やはり『学び合い』と「アドラー心理学」には近い考え方が多いので、これらを土台にするのはぶつかり合うことなく自分の軸にしていけそうだと再確認できました。
では『学び合い』と「アドラー心理学」の違いはどこかと言えば、これも結構考えてきたのですが、簡単に言えば「集団を相手にした考え方か個人を相手にした考え方か」ということになるかなと私は考えています。
〈まとめとおすすめ〉
「嫌われる勇気」や「幸せになる勇気」に比べて子育てする親向けにライトに書かれていてとっつきやすい感じがしました。子育ての具体的な場面や声かけの仕方も出てきていたので、より実践しやすい書き方です。
一方理論のところを深く知りたければ「嫌われる勇気」や「幸せになる勇気」の方がいいと思います。
本書は一つの章テーマが4ページで完結していて、4ページ目にはまとめも書かれているので、とにかく読みやすいです。子育て・教育に関わる多くの人に、アドラー心理学の入り口としてとてもいいなと思いました。
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