今回は『「忙しい!」を誰も言わない学校―異学年学習・ジェンダーによる学校まるごとの処方箋』を読んで要約してみました。
要約している時に書いたノートも載せておくので参考になれば幸いです。
本書はタイトルの通り、異学年学習を通して子ども達のネットワーク、同僚とのネットワークを結び、自分の背負っている荷物を子どもや同僚とともに担うことによって、素晴らしい子ども達の学びを実現しつつ、誰も忙しいと言わない学校が実現することを願う内容です。
⚪︎学校が忙しいのはなぜ?
学校現場が忙しい理由として本書では2つ原因を紹介しています。
一つ目は「子どもが担わなければならないものも教師がお節介に担ってしまっていること」です。授業や行事において、本来子どもたちに任せればもっと自分たちで出来る部分は多いです。それにもかかわらず、教師が子どもたちが失敗しないように、見栄えが良くなるように、保護者や周囲からの不満ができるだけでないようにと先回りして手を出しすぎてしまっている場面が散見されます。それにより教師の負担が大きくなっています。
2つ目は教師自身が他人とのつながりを持てる余裕がなく、職員集団のネットワークがうまくできていないことです。それにより、伝えられるべきものが伝えられず、1つ目の手を出しすぎる状態、お節介にもつながっています。
⚪︎本書が提案する解決策
本書は上記の原因で起こる学校の忙しいの解決策として、「異学年学習」を提案しています。
効果としては
・子どものネットワークができることで教師が手を出す場面が減り荷を下ろすことができる。それにより余裕・余白が生まれる。
・子どもの異学年同士の関わりを見る中で、自らの職員集団のネットワークも省みることができ、職員集団のネットワークの形成なつながる。根治療法的な考えです。
⚪︎異学年学習のためのマインドセット
異学年学習の有効性を信じ、実践しようと思えるようになるために、いくつか身につけておくべき考え方や前提条件があります。
日本の徒弟制度のように、一つの目標を共有する集団が存在する場合、そこには「学び」が発生するのがふつうということ。学びというのは学校の専売特許ではなく、人が集まり目標が共有されていれば自然に起こるものである。
・学年別学習の起源
年齢別のクラスという考え方が出てきたのは19世紀後半からであり、人類の学びの歴史から見たらごく最近のこと。ずっとそれが当たり前だったわけでない。
・発達の幻想
発達論的に学年別のクラスは妥当だという考えがある。ピアジェの発達段階説は教師を目指すものなら大学で一度は聞いたことがあるでしょう。しかし、ピアジェの発達段階説を誤って受け取った時に起こる「特定の年代にならなければ特定の能力は身に付かない」というような固定的な考え方は否定されている。
・すでに部分的にやっている
本書で紹介されている異学年学習は突破な学習法に見える方が多いと思います。しかし、教科学習以外の場面ではすでに同じことをやっています。それは小学校の縦割り班による活動や、中学校・高校の部活動です。そこでの異学年同士の関わり合いをイメージすれば、学びが起こっていることや異学年でも学び合うことが納得しやすくなります。
・簡単で有効な方法
本書の最後で異学年学習は簡単で有効な方法だと述べています。なぜ一見難しそうな異年齢同士の学び合いが簡単なのか?その理由として役割の棲み分けが起こり軋轢が生まれにくいからと解釈しています。同年齢では競争意識など生まれやすいですが、異年齢だと異なる立場からのスタートのため競争とはなりにくく、歩み寄る方向に関わるしかありません。結果として簡単に学び合うようになり、その効果も発揮するそうです。
⚪︎実践例
本書では5つの異学年学習の例が紹介されています。
・切り口として扱いやすい、総合的な学習での2学年合同
・教科学習に取り入れようとした、指導要領の移行措置期間における限定的な理科での2学年合同
・一緒にいるだけにしたことによって定常的に行うことを可能にした、理科での2学年合同
・多学年になった時のようすを調べた、総合的な学習での多学年合同
実践の中で繰り返し出てくる考え方があります。
根幹にある考え方は「子どもたちは有能だと信じる」事です。この考え方を根っこにして以下のことに気をつける事で異学年学習の実践ができています。
・異質な人と話すことが必然とならような高い志、共通の目的、困難な課題を与える
・上級生や下級生ということによってお兄さん役お姉さん役、弟役妹役、教える役教えられる役などの役割を強いない
・教えたい気持ちを抑える
・手の内をさらし、文化と環境を整え、見守る姿勢を持つ
⚪︎異学年学習の効果
改めて異学年学習による効果をまとめます。
・子ども達の学び合いと、数年にわたって実践することで起こる「文化の伝承」によって、子どものネットワークができる。そのことで教師が手を出す場面が減り荷を下ろすことができる。つまり、子ども達と一緒に教育活動の荷を背負うことができる。
・子どもの異学年同士の関わりを見る中で、自らの職員集団のネットワークも省みることができ、職員集団のネットワークの形成につながる。つまり、同僚達と一緒に教育活動の荷を背負うことができる。
この2つが相まって、学校から過剰な忙しい状態をなくしていくことができる。
⚪︎最後に
本書の後半に今までの本でも著者の実践で出てきた「自己モニター」によってジェンダーの問題も解決できることが書かれています。また実践例の部分は繰り返してたから考え方に絞りましたが、各実践での子ども達の会話のプロトコルを具体例として見ることで、より自分の中で腑に落ちさせることができると思います。
気になる方はぜひ読んでみてださい。