丹後先生の生き様公開と仲間づくりのためのブログ

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読書記録「〈叱る依存〉がとまらない」

先日から読み進めていた「〈叱る依存〉がとまらない」を読み終えました。Part1の部分についてはすでにブログで発信しましたが、とても面白かったです。私を含め叱る側に回りやすい教師はもちろん、叱るという現象はとても身近なので、叱る側に回りうる全ての人が呼んだらいいと思う本でした。

 

4部構成になっていて

Part1は「叱るとは何か」

Part2は「叱るに依存する」

Part3は「〈叱る依存〉は社会の病」

Part4は「〈叱る依存〉におちいらないために」

という内容です。

 

1で叱るとはどういうことか、叱られた人の内側では何が起こるのか、叱るの効果と限界が語られ

2で叱るに依存してしまうのはなぜか、虐待・DV・ハラスメントとの関係、叱るを正当化したくなるのはなぜかが語られています。

理論的なところはPart2まででかなりわかると思います。

私なりに要約すると

(Part1)

叱るとは、相手の変化を願って、権力のある人からない人に向けて行われる、受け手にネガティブな感情を与えて思うようにコントロールしようとする行為のこと。

叱る側のネガティブな感情を利用しようとしているかの認識も大事だと思いますが、それよりも受け手側の感情体験が大事ということです。この点はいじめにも似ています。

 

叱られた側には恐怖や不安、苦痛や嫌悪が感じられ、「戦うか、逃げるか」の反応を引き起こす。学習効果は期待できない。よって叱るには「危機介入」と「抑止力」の効果しか期待できない。

 

(Part2)

叱ると相手の変化がすぐに見えるため「自己効力感が高まる」「処罰感情が満たされる(悪いことをした人に罰を与えることが人間にとって魅力的なご褒美となる)」ことで気持ち良くなってしまいます。

 

また、2つの「ご褒美による快感」だけでなく、叱る側の「受け入れ難い現実(教師なら指導がうまくいかないなど)」があることによって依存になりやすくなります。

 

つまり、教育的効果は期待できないのに、叱る側の「ご褒美」と「一時的な現実逃避」というニーズを満たすためのものになってしまっており、教育的な手段としては適切でないといえる。

 

 

 

3は叱る依存が背景にあると考えられている社会現象の紹介です。自分に関係がありそうなところはしっかり読んで、少し遠い話は流し読みしました。

出てきたテーマは

少年法、薬物依存などに関わる厳罰主義

・スポーツ指導、学校教育に関わる理不尽に耐えるは美徳という考え方(ここはしっかり読みました)

・芸能界やSNSの炎上などに見られる過剰なバッシングと立ち直りを許さないシステム

などです。

 

 

 

4は本書のテーマでもある「叱るとうまく付き合っていく」ためのロードマップになっているので、おすすめです。

 

マクロな視点として、社会の常識を変えていく必要性が語られます。叱ることに効果がある、理不尽に耐えることで成長するというような素朴概念・苦痛神話から社会全体として脱却していくことが必要になります。そして叱らずにいられない人を叱るのではなく、支援していこうということでした。

 

ミクロな視点として、個人が叱るとうまく付き合っていく方法が示されています。

まず、誰かを叱ってしまう自分を叱らないこと。

 

そして第一段階として、叱ってしまう時には「教育的効果は期待できないんだから、速やかに叱り終える」ことを意識するといいそうです。また、抑止力として使うときも実際に叱る必要はなく事前に予告することを基本とします。

 

次に第2段階として、徐々に叱るという手段を手放していくために

まず、自分が権力者であることを自覚し、自分の考える「あるべき姿」が本当に適切なのかを自制し続ける姿勢が大切です。

 

そして、叱らずに済むためにはそもそも問題が起きる前に対策をする「前さばき」が需要になります。前さばきが上手くなるためには予測力を鍛えることと、相手が「しないのか(誤学習)、できないのか(未学習、そして多くの場合はこちら)」を見極めて対応する方法があります。

 

予測力が高くなれば想定外のことが減り、イライラすることも減ります。この力を高めるには普段から予告を癖することです。

できない(未学習)への対応は、やり方を工夫すること、やりたい・ほしいなどの「冒険モード」を邪魔しないがあり、

しない(誤学習)への対応は、何をすれば良いのか明確に伝えて、それをすることで「報酬」を受け取れる状態にすることがあります。

 

最後に、叱るを手放していくには自身のゆとりを取り戻すことが最優先と書いてありました。前さばきが上手くなるには叱るよりもずっと高度な注意力が必要になってくるので、考えてみれば当然です。この辺りは働き方改革の必要性とも関わってくると思いました。

 

 

読書会でも皆さんと話していましたが、これを知っていても叱ると上手く付き合っていくのは難しさがあります。だからこそ、教育の専門である私たち教師は知識として身につけておいて、日々の実践の中で試行錯誤し続ける姿勢が大事だと思います。

おすすめの本です。

 

 

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